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Posted by ミリタリーブログ at

2012年07月25日

叱ってくれる人を助けることは大きな使命である

高齢化が進んでいる。日本中ほぼ全ての場所に。わたくしの住むこの地方都市も例外では無く、旧市街という独特な環境がそれに拍車をかけていた。
向こう三軒両隣、年寄りばかりである。わたくしは土着だ。一時期を除いてずっとここで生活している。昔、おばさんだった人、おっかないおじさん。ほぼ例外なく年寄りになっている。
悪ガキだった頃(今も大して変わらないが)近所の誰にも叱られた。誰にでも声をかけ、叱る。時に誉める。古き善き時代がそこにあった。
今では叱る相手は激減し、まかり間違って叱ろうものなら、「頭のオカシイ爺ぃ」呼ばわりされるため昔より静かな街なっていた。

『街は生き物である』の言葉通り、今、古き善きモノは絶滅にあえいでいる。発生しては消えていく、生き物達の流れは変えられるものではないが、自分の足跡はなんとかそこに残しておきたいものでもある。
話しは長くなったが、要は年寄りが住みにくい街になったと言う事だ。それは置かれた状況だけでなく、環境もまたしかり。
今年も暑い。むちゃくちゃ暑い。しかし歳を重ねるとある種のセンサーが鈍くなるのか、窓を締め切り平然と道路を眺めている年寄りをよく見かける。
近所の初老のクリーニング屋のオヤジが言う。『お宅の隣りのバァちゃんさぁ。エアコン無しで締めっきりでいるじゃない。大丈夫かなぁ』
確かに心配だ。よく叱られたが、この時期「卵アイス」なる風船にアイスが入っているシロモノをもらった記憶が鮮明によみがえる。
「汝、隣人を愛せ」まさに世代交代。今はわたくしが助ける番なのだ。
隣りのバァちゃんはご主人に先立たれ、現在は一人暮らし。家業の建具屋も閉めて、入り口はカーテンが閉まっていて中の様子は伺い知れない。
昨日の昼間、隣りの町内のお年寄りが救急車で搬送された。熱中症だ。幸い命に別状は無かったそうだが、たまたま隣りの人が異変に気付き大事に至らなかった。
今日も蒸篭蒸しのような暑さだ。隣りのババァは生きているのか?想像はヒトをオカシクする。ババァが死んだらわたくしのせいだ。恩人を見殺しにして恥ずかしくないのか!!(まだ何ともない人をつかまえて失礼である)

居ても立ってもいられない精神状態は暑さも手伝ってピークに達した。
ドアブリーチングだ。ババァに施錠の習慣を身に付けさせたのは他でもないわたくしだ。早速、紺の上下を着込み、ベストにライトにヘルメット。そしてベネリM1014に12ゲージのドアブリーチング用シェルを装填する。
『ババァ待ってろ、今、助けてやる』チャージングハンドルが"カキーンッ"と鳴り、ベネリもわたくしの正義を後押しする。
慌しくブーツを履き、道路に飛び出る。『ババァ!!』わたくしは半狂乱になりながら隣のサッシ戸に跳び掛かる。

すると・・・カラカラカラ・・・軽いタッチでサッシ戸は開いた。中から程よく乾いた涼しい風がわたくしを迎える。
呆然とするわたくしを半ギレでババァが叫ぶ。

『エアコンたいてるんだから閉めとくれっ!!』

ババァ無事でよかった。エアコンあったなんて知らんかった。クリーング屋のオヤジに嵌められたのか?イヤ違う。あのオヤジはいい加減で有名だ。それを鵜呑みにした自分のミスだ。
マヌケに突っ立っているわたくしに、ババァが呟いた。『そうだ、卵アイス食べるかい?』

今年も暑くなりそうだ。

C'est vraiment bon.

レスキューセット




皆様との幸せな時間がいつまでも続きますように

ではでは  

Posted by てっぽさん at 22:23Comments(2)ショート・ショート