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Posted by ミリタリーブログ at

2012年10月09日

今考えてる事の逆が正解だ だがそれは大きなミステイク

久しぶりに近所のカフェに行った。もちろん昼飯を食うためだ。マスターは相変わらずサウナの常連よろしく腰にタオルのようにカフェエプロンを締め、少し太ったスタンスフィールドのように虚ろな雰囲気を垂れ流しながらサイフォンでコーヒーを入れていた。
『あぁいらっしゃい。しばらくぶり・・・』いつも覇気の無いオーラだがこの日は一段と抜け殻状態だ。ここの料理はウマイが時間がかかる。今日は特に時間が掛かるんじゃないかと不安になった。
『おいおい!オヤジしっかりしようよ』堪らずヤンワリと喝を入れる。まぁコノ位でエンジンが掛かるなら、この店ももっと繁盛しただろう。今のマスターのペースならこれが限界だ。言い換えれば「身の丈にあった経営」と言えるのかも知れない。
とは言え、何かこう聞かれたそうなオーラを出されると声を掛けないワケにもいかないので、しかたなく聞いてみた。
『オヤジ、何かあったの?』言い終わらないうちにマスターは被せてきた。
『そうそう!聞いてよ。先週さぁ、知り合いの山に山菜とかキノコとか獲りに行ったんだよ。そしたらさぁ熊が出るとか出ないとかで・・・』
オヤジ長い。ブレンドはどうした?お冷やも出てないぞ。
しかしマスターは尚も続ける。
『しかも地主の許可取ってるのか?とかさぁ言われちゃってさぁ。第一お前は誰なんだよって話しさ。地主は知り合いだって言ったら「みんなそう言う」なんて言いやがってさぁ・・・』
長い。長すぎる。・・・ようやくブレンドが眼前に置かれた。
楽園の薫りを堪能する。もはやマスターの話しなぞ上の空だが、彼は身振り手振りを交え話は止まらない。
『結局、熊狩りだとか何とかで追い出されちゃってさぁ、しかたなく麓の直売所に行ったんだよ。そしたらさぁ・・・』
おい、オーダーを取れ。わたくしは腹が減ってるんだ。
とりあえずマスターをなだめオーダーをすることにする。『わかったから。で、今日のお薦めは何なの?』
演説を遮られ不満そうだが、わたくしの空腹には敵わないと判断し、渋々小さな黒板を見せる。
『今日はその直売所のキノコのリゾットだよ。珍しいのが手に入ったからさぁ・・・』
長い。 結局、マスターの一押しと言うリゾットをオーダーする。が、マスターはまだ未練があるのかこちらに顔を向けたままだ。

やはり、しょぼくれ顔のマスターには話しかけないのが正解のようだ。
ようやく調理を開始しても『あぁでもない。こぅでもない。』と延々話しは続き、わたくしは空腹を通り越し最早どうでもよくなっていた。

しばし時が過ぎ、目の前に鮮やかなキノコのリゾットがもたらされた。『おおぉっ』思わず声を上げるわたくしに満面の笑みでマスターは応える。
『冷めないうちに召し上がれ』 確かにウマイ。秋を独り占めしているかのような豊かな味わいだ。無駄な時間が有意義にさえ思える。

リゾットに対峙するわたくしにマスターは語りかける。
『ボクも学生の時に空手とかやっておけばよかったよ』 意味がワカラン。わたくしはコーヒーを流し込みながら『何故?』と訪ねた。

彼は誇らしげに『だって熊を退治できるんだよ』

間違ってるぞ。何を読んだんだ?

狩りの季節だな。

返り討ちに遇うのは目に見えているが・・・

Un jour, dans une forêt, j'ai rencontré un ours.


皆様との幸せな時間がいつまでも続きますように

ではでは  

Posted by てっぽさん at 22:40Comments(8)ショート・ショート