一握の弾丸（いちあくのたま）

久しぶりに定時で終わった。つい半月前なら昇る朝日にライジングサン！！なのだが、日が短くなりダークネスな世界が拡がっている。
詳しくは明かせないが、我が家は弱小都市の旧市街にある。夜中から明け方にかけてアルコール漬けの"ゾンビ達"が闊歩している。
たまに我が家の前に盛大な"もんじゃ"が展開していたり、仲良く歩いてきたのにいきなり乱闘が始まったりと、なかなかのスラムっぷりに閉口することしばし。
まぁ生まれた時から住んでるから、気にもならないし、自分も同じことする可能性があるので、あきらめてたりする。

話しは逸れたが、早く帰ったので、お義理に走って見ることにした。ジムの真似事には通っているが、年間会員とやらにはならず、ずっとビジターで毎回カネを払う。
なんとなく今日は時間もあるし小銭を払うのも憚られたので、近所の偵察とばかり走ることにしたのだ。
こてっぽさん（仮）を従えてだと、ただの散歩だ。ヤツは自分の好きなタイミングで走り、そしてピタッ止まりマーキング。
今日はヒトリで思いっきり走りたいんだ。悪いがお前は連れて行けない。ガッツリ膝にテーピングをし靴を履く。
泣き叫ぶこてっぽさん（仮）をなんとか押しトドメ出発する。肌寒いがいい感じだ。風を切る音、地球を蹴る感覚。朝で無ければ感じられまい（早く日勤に戻りたい・・・）
ふと、前方から自転車に乗ったふたりがこちらに向かってくる。うむ、早朝からご苦労なこった。すれ違おうとした、その刹那！！
『おはようございますぅ。ちょっとだけいいですかぁ？』
よく見たらお巡りさんだ。何事だ？素直に応じる。
話しを聞いていると・・・何てこった！！所謂「職務質問」じゃねえか！！確かにヒゲにニット帽、黒いパーカー・・・って足元見ろよ
いまシャレオツなレギンスに短パンだぞ？どう見たってジョッガーじゃねか？あれか？人相か？よく見ろ、わたくしだぞ？

説明しよう。このオッサンは、こう見えても（見えないけど）いろんなところに首を突っ込む"おせっかい野郎"で地域貢献やら祭りの委員やら
広い・・・かなり広い意味で有名人だ。近所を警邏してるお巡りさんなら当然わたくしの事を知っているはず。なのに何故こげな目に・・・。
なんとなくハラが立ったわたくしは端々に嫌味を込めて、できるだけ慇懃無礼に応じた。しばし不毛なやり取りが続き、巡査長が気付く。
『あぁ！！〇〇町の倅さんでしょ？！ごめんねぇ』
新人君はポカ～ンとしている。巡査長が新人君の肘を突付き、小声で呟く『ほらっあの・・・』
すると『あぁ！！あの人ですかぁ？いつも奇抜な恰好だから解らなかった。どうもすみません』　う、うぅ～んと・・・そんな奇抜かね？わたくしは。

わたくし的には、今日の方がよっぽど奇抜だと思うんだが・・・あれかっ？「のっぽさんルック」か？それとも「蕎麦屋スタイル」か？

釈然としないまま我が家に到着する。辺りはすっかりライジングサンだった。

もちろん、こんな恰好では走らない。・・・と思う

むしろ、これで止められなかったら問題だ。

L'agent de police du chien est troublé.


皆様との幸せな時間がいつまでも続きますように

ではでは