2012年07月26日

恥はチカラなり。

先日のド派手なドアブリーチングにより近所の心象は底値に達していた。
無理も無い、イカレたアフロ野郎が白昼堂々押し込んで来たのだ。顔見知りだったとしても不愉快極まりないであろう。
こんな状況を打開すべく、近所の知恵袋。または、長老と呼ばれるオトコの家の門をくぐった。
彼は元大学教授で考古学が専門だ。まさに温故知新、今を生きる事と過去への尊敬。道は続いているのである。

彼は引退したとはいえ「教授」や「先生」と呼ばれる。さすがのわたくしも「ジジィ」とは呼ばない。「教授」と呼んでいる。
気楽な隠居暮らしの老人へ訪ねたとはいえ、突然の訪問だ。礼を失する事のないよう「アイスまんじゅう」なる手土産を持ち
書斎へ通された。『教授、おじゃまします』至極丁寧かつ愛想もへったくれも無い社交辞令を放った。『うむ。暑いのにご苦労だね』地方都市とはいえ下町だ。穏やかな口調だがこのクソジジィも口は悪い。
『これ』持っていた「アイスまんじゅう」を差し出す。この場合普通ありえないチョイスだが、変わり者のジジィなのでこういった
「俗っぽい」モノが好きなのだ。うんうんと頷きながら袋の中をのぞく。小分けにされたひとつを取り出し、モフモフいいながら
アイスまんじゅうを食らうジジィはちょっとかわいい気がしないでもない。ちょっとした小動物に餌付けをしている気分だ。
ほどなくして、メイド・・・と言っても「家政婦は見た」的なメイドさんだが、このクソ暑いのに紅茶を持ってきてくれた。
小動物のおやつタイムが終わるまでガラスのポットを上下する紅茶の葉を眺めながら、ここに来た事は意味が無いんじゃないかと
思い始めていた。
『何か用事があるんじゃないのかね?』おやつタイムが終わり、小動物は口ヒゲを粉だらけにしながら訪ねる。"飼い主"としては
粉だらけのペットが不憫に思えて、手元にあるティッシュを一枚渡した。
『二枚。』  『へっ?』『二枚欲しい。』 こともあろうに"ペット"はティッシュを二枚目を要求した。わたくしが渡さなければ気にもしなかったくせに。

ようやく本題に入れそうだ。わたくしは教授に経緯を話し、率直にどぉすれば良いかを訪ねた。正直、まっとうな答えは期待しない。
面倒臭くなってきたからだ。
すると「教授」は紅茶を啜りながら、中東文明の話しやアフガニスタンでの発掘の思い出。トルクメニスタンがどこにあるか、など
どうでもよい話しに華を咲かせ、勝手にクロージングに入ろうとしていた。

『つまりだな・・・全ては昔から続いているんだよ、そして未来永劫な。』

んっ?意味が解らない。わたくしにどうしろと言うのか?ひとしきり語り、「教授」は満足そうにもうひとつアイスまんじゅうを食べ始めた。
何かいい事言いました的なオーラを出して、満足そうだ。やはりコイツに聞いたのは間違えだったと思った時、二つ目のアイスまんじゅうを完食したヤツが言う。

『わしにはワカラン』  やっぱり。

無知はチカラなり・・・自分で答えは探そう。

Ce qui tu dis est peu fiable.

答えを探す冒険だ
恥はチカラなり。


皆様との幸せな時間がいつまでも続きますように

ではでは




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Posted by てっぽさん at 22:41│Comments(0)ショート・ショート
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